「相続させる」と「遺贈する」
遺言者が、相続人に財産を承継させるときは、「相続させる」と記載し、相続人以外の者に承継させるときには「遺贈する」と記載します。
- ポイント
- 遺贈は、相続人に対してもすることができますが、相続人に対しては、「相続させる」とした方がメリットがありますので、「相続させる」と記載しましょう。
「相続させる」と「遺贈する」の違い
「相続させる」遺言と「遺贈する」遺言には、以下のような違いがあります。
- 不動産の登記手続について
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- 「遺贈する」の場合は、遺言執行者がいるときは遺言執行者と遺贈を受ける人が共同で、遺言執行者がいないときは相続人全員と遺贈を受ける人が共同で、所有権の移転登記の申請をすることになります。
- 「相続させる」の場合は、相続人の単独で申請することができます。
- 不動産の登記の登録免許税について
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- 「相続させる」の場合は、登録免許税は評価額の1000分の4です。
- 「遺贈する」の場合は、1000分の20になります。
- 農地の取得について
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- 「遺贈する」の場合、包括遺贈の場合を除いて、農地法による知事の許可が必要となります。
- 「相続させる」の場合、農地法による知事の許可なく所有権移転登記をすることができます。
- 借地権・借家権の取得について
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- 「遺贈する」の場合は、借地権・借家権を取得するのに賃貸人の承諾が必要となります。
- 「相続させる」の場合は、賃貸人の承諾は不要です。
- 遺贈・相続の放棄について
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- 「遺贈する」の場合は、それが特定遺贈のとき、受遺者はいつでも遺贈を放棄することができます。
- 「相続させる」の場合は、相続そのものを放棄しなければなりません。
「相続させる」遺言のメリット
上記から、「相続させる」遺言には「遺贈する」遺言と比較して、次のようなメリットがあります。
- 相続財産が不動産の場合、「相続させる」として指定された相続人が単独で相続登記の申請をすることができます。
- 不動産の移転登記申請の登録免許税が安くなります。
- 「遺贈する」遺言の場合は、評価額の1000分の20
- 「相続させる」遺言の場合は、1000分の4
- 相続財産が農地の場合、「遺贈」と異なり知事の許可が不要になります。
- 賃借権を相続する場合、賃貸人の承諾が不要になります。
- 債権者に対して、登記なくして自己の権利の取得を対抗することができます。
遺贈
遺贈とは、遺言による財産の無償譲与のことをいい、遺言により財産を与える人を遺贈者、財産を与えられる人を受遺者といいます。
兄弟姉妹以外の相続人は遺留分の権利を有していますが、遺留分を侵害する遺贈も当然に無効ではなく、遺留分を侵害された者からの請求によって、減殺されるにすぎないとされています。
遺贈はこんなときに
受遺者は法定相続人でなくてもかまいませんので、法定相続人以外の方に対して何らかの財産を残したい場合に遺贈を利用するとよいでしょう。
また、相続順位の低い相続人、たとえば、子がいる場合の孫などに財産を残したいというときに遺贈することで、その意思が実現できます。
包括遺贈と特定遺贈
遺贈には、受遺者に具体的な財産を与える特定遺贈と、遺産の全部または一部の分数的割合を与える包括遺贈があります。
○○銀行の普通預金口座の預金を与えるという特定の財産を与える場合が特定遺贈で、財産の1/3を与えるという場合が包括遺贈です。
包括遺贈の受遺者は、相続人と同じ権利・義務を有するとされていますが、遺留分や代襲相続などの権利はありません。
負担付遺贈
負担付遺贈とは、ある一定の負担をしてもらうことを条件に財産を承継させる遺贈をいいます。
たとえば、ペットの世話をしてもらうかわりに、一定の財産を与えるときなどにも利用できます。
負担付遺贈をする場合は、あらかじめ、負担条件について十分に話し合って、受遺者の理解・同意を得た上で遺言することが大切と考えます。
遺言書を残した方がよい方?
- 子供がいないご夫婦
- 入籍をしていない事実婚、内縁の夫婦
- 遺産のほとんどが不動産
- 複数の子どもがいる
- 特定の者に事業を承継させたい
- 先妻との間にも子がいる
- 財産を与えたくない相続人がいる
- きがかりな相続人がいる
- 家族の仲が悪い
- 相続人以外の人に財産を与えたい
- 大切なペットがいる
- 遺産を寄付したい方
該当する方は、心身ともに健康なうちに遺言書を作成しておくことをおすすめいたします。
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